皮膚に冷たい鋼が触れた。
熱い血潮が首から、命とともに溢れだす。
 
 

 おれは痛みを認識する前に死んだのだ、と石田三成は思う。戸籍上の名前は別にあるし、問題が起こることは間違いないので特に名乗りもしない。幼い時分は、斬首の瞬間をよく夢に見て怯えたものだった。だが成長とともに記憶はゆっくりと遡ってよみがえった。現代の常識からしてみれば強烈な出来事も、今の自分の前に生きた自分がいたのだと、三成は了承していた。
涼しくなってきてからというもの、断続的に首筋が痛む。新聞の切り抜きをするために持っていたカッターの手をとめて、詰襟の制服の上から、傷口であったあろう辺りをおさえた。
テーブルにひろげた新聞紙には、二〇〇六年の九月十五日、金曜日と印刷してある。
 
左近。
三成は無二の臣の名を呟いた。
 
――おれはまだしつこくおれだ。
 
――おまえを必要だと思い、遊郭に上がりこんだ、おれのままだ。
 
四百六年も経つ。いま、十五年を生きていても、平和を安らかには感じられない。それは「現代」が、自分たちが敗れたあの日から、続いているという事実のためか。
 
――未だに、怒りを覚えることばかりだ。しかし何が許せぬのかわからん。
きっと、すべてなのだろう。
 
左近、お前に仕方なさそうに笑って欲しい。
 
――叶わぬことだろう、な……。
 
三成はスクラップブックを閉じ、新聞紙をまとめて学校へ向かった。




書き終わって思ったのですが、
無双2三成というよりも、関ヶ原(ドラマではなく原作)三成になった、ような…
脱兎!