三国鼎立時代の中華には同衾という文化があり、親しい男どうしが臥所を共にすることが友情のしるしといって多々あった。

「伯言」

 呂蒙が呼ぶと、

「今宵は空けておけ」

 陸遜は振り返る。その首には今日も、白い包帯が巻かれていた。

 


 先ほどまで首に巻かれていた包帯は夜を映しかえして、貝の内側のように青白く広がっていた。白い首筋があらわになる。呂蒙の節の目立つ指が絡まった。やがてギリリ、と力が込められる。陸遜が息をのみ、呼気が鳴る。顎が跳ね上がる。細面なため華奢に見えがちな顎が歯と噛み合った。ふだんはやわらかな曲線を描くまだあどけなさすら残した頬が、強くたわんだ。長い睫を、涙が伝う。琥珀の眼は長く見開くうちに乾いて、中央の瞳には、死を間近にした恍惚の影が深くなる。

 連れていってください、と陸遜は願う。

その影を落としているのは、呂蒙であった。陸遜を臥所に乗せ、そこに馬乗りになって首を絞めている。ひどく力を込めているため、無精髭を周囲にした口許は震えていた。――瞬間、呂蒙の喉奥から、込み上げてくるものがあった。

 手を離す。口許を覆う。身体を折る。咳き込む。陸遜が呂蒙にすがるように呂蒙をすくうように、きつく抱きしめた。

 ただ咳が止まらないだけであるのに、いくら吐き出しても痰が止まらない。かすれた、不快な咳の頻度は高まっていく。一見風邪のような呂蒙の咳は、すでに二年続いていた。

 

 

 おまえをこんなにもひとりにしたくないのに。