夜のなかに炯々と、伊達政宗の独眼の奥が燃えている。ただ一枚はおった白い寝間着の襦袢には、迦楼羅が銀糸で縫いとられていた。織田幸村は、養子となったとはいえ、出身が真田郷という、人々は戦よりも馬を肥やすことに長けた土地で生まれ育ったので、迦楼羅がどのような鳥であったか、思い出すのは少し難しい。
(確か…天竺の)
(龍を喰らう、鳥)
「夢であろう、これは…、幸村」
答えるよりも早く、流星のような速さで政宗は幸村に接吻していた。不慣れな幸村は、くちびるのあいだから息を吸うが、それすらも飲み込もうとする激しい口づけに、身体の芯がおののいた。力が抜けた一瞬のうちに押し倒された。後頭部をしたたかに打ち付けてしまったため、視界が爆ぜた。嫌だ、と幸村は思う。
(陛下、……あなたの顔が見えない)
口のかたちでそう伝えると、政宗はいちど身体を離した。政宗は幸村の太腿の上にまたがった。舌先でついばむように、髪の生え際に、耳朶に口づけを落とし、首筋や腹筋を舐める。脇腹を撫でると幸村はくすぐったげに身をすくませた。手触りを楽しむように数度撫ぜると、思い立って爪を立てた。
「陛下、」
幸村は乱雑さを咎めることはしなかった。そのことに、政宗の矜持はかすかに傷ついた。なじれ、そなたを犯そうとしている男をなじってくれ、と、心のどこか深い箇所で思う。そして幸村は、政宗を強く抱き締めすらした。そのとき、政宗は幸村の摩羅もまた、熱くなっていることを確かに感じた。政宗は息を詰めて、幸村の肩口に顎を押し当てた。いかに夜半とはいえ、眼が慣れれば表情も分かってしまう。知られなくなかったのだ。だが幸村は、少し顔を離して、政宗の左目を見つめた。涙の溜まった下睫毛を右手の甲で掬い取った。
政宗は諒解を感じとると、幸村の後孔に指を這わせた。突然のことに、幸村が精を放つ。
「これは夢です。……陛下、お早く」
政宗は指先にたっぷりと精をまとわせると、幸村の後孔に指を押し当てた。くるりと円を描くようにゆっくりと広げると、それでも痛みが強いのか、幸村の白い歯が、くちびるの端を噛んだ。
「すまん。しばし耐えてくれ」
もはや返事もままならない幸村から指を引き抜き、一気に政宗は自身を押し込んだ。
「陛下ッ、ア……!」
律動をはじめた政宗は、幸村の寝間着の襦袢の裾を見た。はだけたそこには、銀糸で龍が縫い取られていた。独眼龍たる政宗には、それが幸村のどういった想いを示すのか、判別することは容易かった。幸村の襦袢の龍もまた、片目がつぶれていたのである。