クリスマスの近いデパートは、寄り添った男女やら力強い中年の女性やらけたたましい家族連れやら、一階はひどく混みあっている。信繁はうんざりとして、アクセサリー売り場を通り過ぎようと、した。
目に留まったものがあった。
いばらの絡みついた、小さな十字架だ。黄金にきらきらと輝いている。
政宗が好みそうだと、信繁は思った。
(いや、どうかな)
慶長渡欧使節団。信繁が○○○○だった頃、中学生のときに、高校生のときに学んだその結果は、失敗の二文字だ。伊達政宗は同盟を見込んで、支倉常長をスペインに派遣したが、形式的な歓迎を受けたのみで帰国を迎えた。そして、その日に、領内でキリスト教の禁教令を出した。
信繁はそれが、歴史論者のあいだで語られているように、ルイス・ソテロの書簡が残すように、政宗がそのころのキリスト教信者を扇動して倒幕を狙うものだったのかどうか知らない。いま政宗に尋ねたとしても、
(おぬしはどう思う)
質問で返されるような予感がするだけだ。
信繁は両眼を細めて思う。
(悲しいかな、あなたのことを何も知らない)
信繁はすぐに目を開いて、歩みを再開した。手袋売り場に向かった。なぜ手袋かというと、自分が貰って無駄にならず、喜ばしいからだ。予算は用意してある。政宗の着物に添うものが、見つかればいいと思った。