「認めてしまえ! 」

 言うが早いか、××××は○○○○の腕を引いて駆け出した。

「ア」

突然のことだったので、背中がぐん、としなる。○○○○は、一瞬遅れて走りはじめる。○○○○は、××××の奔放に跳ねる、つやつやとかがやく栗色の後ろ髪を見つめた。白いうなじを見つめた。初対面のはずだというのに、互いに同い年だということは、○○○○にはわかっていた。彼が生年を違えて生まれてくるはずがなかった。

 どうして知っているのだろう、自分への疑念を抱いた○○○○の思考を、つつじの香りが奪った。背丈ほどもあるつつじの生垣を、よく切り込んだ迷路のなかである。緑の葉に、あかあかとしたつぼみが慎まやかに、咲くときを待っている。

「はなーのようなーるひーでよーりさまを、
おにーのようなーるさーなだーがつーれて」

 ××××は一息に、茶化すみたいに唄った。

 ○○○○は、自分のなかで、つぼみが開くのを感じた。駄目だ、と思ったときには遅かった。記憶は奔流のごとく流れだす。

 私は――――。

 ○○○○は立ち止まった。同時に、××××も足をとめた。××××は意地悪げにくちびるの端をゆがめた。

「忘れたままでいたかったか」

 しかし逃さぬ。

 四百年じゃ、四百年待って、ようやく探しだした。

 そう続けた××××は、もはや××××ではなかった。○○○○ももはや、思い出していた。

「おぬしの言う通り、わしは悧巧じゃからの」

 ああ、この四百年。

 人々が自分に別の名前までつけて、英雄を見たことなど知りたくなかった。

「もう逃さぬ、真田信繁」

 信繁は瞼をおろした。だが、振り返った伊達政宗の端整な面立ちは消えることがなかった。再会を、自分もまた望んでいたのだ。