庭の梅にそそぐ光が、かすかに弱くなってきている。ふと見上げた空はやわらかな青さをたたえていた。豊臣家が滅んだ夏が、もうすぐ終わる。
秋が来れば冬の訪れはすぐそこである。伊達政宗は庭を眺めていた視線を間近に戻した。そこには片腕、片倉小十郎景綱が折り目ただしく座っている。白石城に来た政宗を迎えるため、いよいよ顔色も悪いというのに布団から出ていた。政宗は小十郎の律儀なところをそれこそ物心のつかない時分より好ましく思っていた。それが、見られなくなる日が近い。緩慢な死の気配を断ち切るように、政宗は口をひらいた。
「小十郎」
政宗にとって、小十郎とは景綱が唯一無二である。もっとも、二代目小十郎である重綱のまえでそのようなことをあらわすほど、政宗は不出来な君主ではなかった。小十郎景綱と二人きりだからこそ許される我侭だ。
「今日は、相談に来た」
小十郎は弟の話を聞くかのように、顔をほころばせた。はい、と小さく頷く。
「日の本を二分する戦いをしてみたかったと思う。道明寺のような局地戦でなく。心の底から殺しあってみたかったと、思う。これは、何だ? 」
拗ねるみたいにぽつぽつとした告白を、小十郎はにこにこと聞いている。
「私が申し上げなくとも、その想いが何であるかご存知でいらっしゃる」
「ああ」
政宗は観念して天井をあおいだ。
「これは、恋だ」