片倉小十郎景綱は、真田源次郎幸村のことを憎からず思っていた。真田幸村という男の持つ空気は清涼で、しかし戦ともなればいちどきに熱を上げて覇気を放つ。その猛々しさは、小十郎が主君と認める伊達政宗のそれにどこか似ていた。

もしも政宗が病に罹ることがなく、母の愛情を正しく受けて、父に庇護され、弟とともに生きていたなら――疱瘡で右目を失わず、それを元に母に疎まれず、人の好すぎる父を我が手で討たず、伊達の分裂を招く小次郎を斬らずに済んでいたなら。小十郎とて常に過去を振り返っているわけではないが、幸村の平時の清廉さは、「もしも」と想像を呼び起こすに充分なものだった。

 ゆえに、小十郎は伊達政宗の腹心であり、いつ敵に回るかわからぬ武田の武士である幸村を憎からず思っていた。政宗と幸村が契りを交わした仲であると知って、驚きはしたが、不快には感じなかった。むしろ、惹かれあったとして、何の不思議があるだろう。しかるべきことではないか。ただ小十郎は、時代というものをわきまえていた。それは刹那のよろこびだろうと、確信していた。

 せめて殿が、真田どのに。

 せめて真田どのが、我が殿に。

 何か絶対の証を残すことが出来れば良かった。

 小十郎は左の指先に疼きを覚えて筆を置き、右手で包んだ。今でも鮮明に思い出すことが出来る。幼い主君の、病で爛れた右目を抉ったあの感触を。

 殿の右目をほんとうに潰したのが私でなく、

 真田どのであれば良かった。

 詮無きことだとため息をつき、小十郎は蝋燭を消した。一瞬書斎は完全な闇に包まれる。小十郎は闇に目が慣れるのを待って、庭に出た。空を仰ぐと、冷え冷えとした空気が肌を刺す。

どうか、殿と真田どのが同じ空の下、いまひとときの熱を身体の芯から感じていますよう、

願った。











戦国BASARAの2に小十郎が参戦すると聞いて
ものすごく心配していました。
1の政宗の孤独さが好きだったので
…実際政宗はかわいくなってしまったように思います。しかし小十郎は単品で一目惚れしてしまったので当サイトのこじゅだてさなは捏造を突き進みます。